2015年11月30日月曜日

低炭水化物、高脂肪食の再考を

Re-Examining High-Fat Diets for Sports Performance: Did We Call the ‘Nail in the Coffin’ Too Soon?

Sports Med. 2015 Nov 9

Burke LM

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26553488

取りあえず、低炭水化物は総エネルギーの25%以下、

高脂質は総エネルギーの60%以上となっており、

炭水化物を1日に20g以下に抑えた実験などもある、

ということです。

2015年11月29日日曜日

第14回陸上競技学会まとめ、雑感

2015年11月28日と29日の二日間に渡って、

日本女子体育大学を会場として第14回となる陸上競技学会が開催された。

本年のテーマは

「女性とスポーツ –妊娠・出産に関わるアスリート活動−」

となっており、

”妊娠・出産を経験した女性アスリートが競技復帰を果たすまでにどのような問題があったのか,そしてこうした問題をどのように克服していったのかについて,経験者の体験を踏まて,議論を展開したいと考えています”

ということで、
千葉 麻美(東邦銀行)
福本 幸(甲南大学AC)
赤羽 有紀子(ホクレン)
コーディネーター 鯉川 なつえ(順天堂大学)

(以上、敬称略)という面々でのシンポジウムが初日の午後に行われた。

それに先立って難波 聡(埼玉医科大学産科婦人科学講師・臨床遺伝専門医・ 日本体育協会公認スポーツドクター・日本陸上競技連盟医事委員)先生による

 「婦人科医から見た女性アスリートの現状と将来」

というテーマの基調講演が行われた。

二日目は

「ジャンプス・カンファレンス-走幅跳-」

ということで

越川 一紀(順天堂大学)
森長 正樹(日本大学)
花岡 麻帆(千葉県立幕張総合高等学校)
小山 宏之(京都教育大学)
コーディネーター 広川 龍太郎(東海大北海道)

(敬称略)という日本の跳躍会において優秀な選手を輩出されておられる指導者・研究者の方々、

日本記録保持者といった面々によるシンポジウムが行われた。

カンファレンスと銘打っていたが、

実際にはほぼ一方的な発表が行われてしまったのが残念であった。

さて、少々この二日間のまとめをメモ的に残しておきますと、

初日の午前にありました2015年の世界選手権の分析だか報告に魅力的な内容はありませんでしたので省略。

午後にありました難波先生の話を数点。

・女性アスリートにおいてはBMIが17.5未満になると26%ほどの無月経が観察される
・BMIが17.5~18.5で20%ほどの無月経が観察される
  ※アスリートでなければこのような低値でも無月経になりにくい
・初経が15歳~18歳だと遅発月経と日本産科婦人科学会は定義している
・12~14歳頃に初経が来るのが望ましい
  ※体重にすると43kgあたりになる頃に初経がくる
    この頃は成長によって体重が必ず増加する!!
・思春期の頃にしっかりと栄養を摂り、成長を促して骨密度を高めることが重要
  ※疲労骨折の増加なども防げる
・無月経などの経験者でも競技を辞めるとすぐに定月経に戻ることが多い
  ※体重が増えることで戻りやすい傾向

こうした発表がありました。やはり成長期なのだから体重が増えるのが当たり前。

太ったのではなく骨や筋肉、内臓などが大きくなるということを指導する側も選手も理解して、

記録に拘らずにその後を見据えて我慢するのも大事だと思われます。

その後のシンポジウムでは各シンポジストの実体験による報告がされ、

三人とも出産近くまで軽い運動を継続し、

出産後も早期に運動を再開したという点が共通していました。

これに関してはコーディネーターの鯉川先生が世界の選手のデータを示し、

産後に競技に復帰したが元のレベルに戻らなかった選手は、

出産前後の半年ほど運動をしていなかったという特徴を指摘されていました。

軽度の運動を医師の指導を受けつつしっかりと行った方が良い、

そういったお話でした。

二日目のジャンプスカンファレンスでは各演者の経験による発表がなされ、

小山先生からは助走スピードの高さと跳躍距離は正の相関関係にあるという報告が。

これは昔から言われ続けている点ですので、

ではどうやったら助走スピードが高まるのか?という話に論点が移行する日を待ちたいと思います。

10年くらい同じ話を聞いていますね。

もちろん、助走スピードが高ければ必ずしも良いわけでは無く、

跳躍技術によっても記録は変化します。

そして助走スピードと100Mのタイムを10種競技の選手で比較したところ、

100Mの最高スピードの95%前後が助走のスピードとなったとのこと。

この点も考えるべきことは多いですが、

そういうデータがある、ということで。

森長先生はやはりPBを如何に上げて本番(オリンピックや世界選手権)い挑めるかが大事、

といった話を。

海外の大会においては向かい風1mくらいの感覚(国内の良い条件で出来ると思わない)、

その他、技術的な話や自らのコントロールテストの変化などを示しながら説明されていました。

ただ、

コントロールテストの記録が大幅に向上しても、

日本記録を再び更新できなかったという点には、

跳躍種目の持つ技術の難しさ(助走における走る技術、踏み切りにおける技術など)があると考えられます。

越川先生は花岡先生を指導していた時のお話を中心に、

花岡先生は昔を振り返りつつ様々なお話を。

試合の前日にケンカした話なんかもありましたが、

指導者である越川先生のポジティブなところが結果につながったと思う、

と。

まぁしかし、技術的な点は10年前のスプリント学会で聞いた話と同じですし、

横浜国立大で真夏にやった時はグラウンドで実演がありましたので、

あぁいった形式でモデルとなる選手を使って動作をやらせながらアレコレ言うのがカンファレンスとしては良いかもな、

と個人的には思います。

以上、

駆け足ではありますが簡単にまとめさせて頂きました。

女性を指導する人は”成長期”という点や”痩せれば速く走れる”といった点をもう一度見直して、

選手が確実に成長できるようにサポート出来れば良いかと思います。

なお、ポスター発表に関しましては、

そのレベルがなんとも言えないものでありますので、

個別の評価は控えさせて頂きます。

一つ言えるのは、「だから何?」という発表が多い点ですね。

この種目、動作をやっている選手で記録が良い人と悪い人の差はどこにあるのか?

というのを調べたとして、

良い選手と悪い選手ではここに違いがありました、

という一か所だけを断定するというのは無理ですよ。

それ以外に隠されている指標があるかもしれませんから。

もちろん、

統計的にそういった傾向が見られるので判断材料の一つとしては使えるでしょう。

が、

ではどうやったら記録を伸ばすことが出来るのか、

というのにつながるような提言はありません。

バイメカの欠点というか、結論を出して終わりの学問になってしまっている現状の問題点というか。

座長の先生にぶった切られた発表者の方とは懇親会で話をさせて頂きましたが、

投擲においてより重いものを用いたトレーニングが一つの引き出しを増やすきっかけとなる、

新しい考えを見いだせる、新たな感覚を得られるという程度の考えならば良いけれども、

それが良いトレーニングである、とは言えないわけです。

投擲動作は上半身と下半身で動作をするわけですから、

負荷が高くなることでどこかに無理な動作が生じる可能性はあります。

そうなると、実際の動作とは明らかに異なった力発揮をすることになり、

より重い負荷でやるのが動作習得にもなって良い、

ということは言えません。

そうした、深く先を考える、多角的に見て検討するといった点が抜け落ちている、

仮定を立てて過程を組み立てる、

そんな感じが多くの発表から見受けられました。

生理学的な観点の発表が無いのも問題ですよ。

現場で測定して簡単に数値を出して指導に役立てている人もいるでしょうから、

そうした人に発表をしてもらいたい所です。

ちょっとあの発表を目の当たりにすると、

日本の陸上競技に関する論文のレベルの低さ、

固定観念によるこの動作が良い!!という主張の多さに辟易してしまいます。

競技経験者による指導と非経験者による指導の比較なんていう話ですと、

経験している人が上にあると考えている事からしておかしな話ですからね。

もっと頑張りましょう、

といったところですね。

2015年11月28日土曜日

低糖質(30~50%)の食事によるタンパク質利用の変化

幼若および成熟ラットの糖質エネルギー比率と窒素出納


本文は日本語ですので読んで頂ければ。

【結論】糖質エネルギー比率50%以下の低糖質・高脂肪食摂取は糖質およびたんぱく質代謝に影響を及ぼし,尿中窒素排泄量を減少させた。これは摂取たんぱく質から代謝されたアミノ酸由来の糖新生が亢進したためであると推察された。

この結論から示されるように、50%以下でも低糖質食と呼ばれるみたいですが、

では人間で実際にタンパク質からのアミノ酸由来の糖新生が亢進しているかは疑問も出ます。

他のも見て総合的に判断ですね。

2015年11月3日火曜日

高齢女性の血流制限状態での歩行実験

Blood flow-restricted walking in older women: does the acute hormonal response associate with muscle hypertrophy?
Clin Physiol Funct Imaging. 2015 Oct 30

Ozaki H, Loenneke JP, Abe T.

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26517965


血流を制限した状態、日本国内においては加圧トレーニングとしても知られている状態で、

高齢の女性に20分間歩いてもらう実験をし、

筋肥大とノルアドレナリンやインスリン、成長ホルモンの分泌の状況を確認しております。

加圧した状態での歩行によってホルモン分泌の増加が観察されるも、

その量と筋肥大とで有意な相関関係が見られないので、

加圧した状態での歩行によるこれらの分泌の向上は、

筋肥大に大きな影響を与えていないのでは、

と推測しております。

この辺りは反証が直ぐに行われそうですが、

ホルモンの分泌を増やしただけでは筋肥大につながらない、

ということが一つ考えられるでしょう。

なお、この文中で使ったホルモンという言葉が成長ホルモンを指すわけでは無い、

ということが分からずに勝手に成長ホルモンと脳内で置き換えてしまった人は、

そもそもにホルモンとは何ぞや?

ということを調べてみると良いかと思います。

2015年11月2日月曜日

トレーニング後に炭水化物の摂取をせずに寝ることの影響

Effects of sleeping with reduced carbohydrate availability on acute training responses

J Appl Physiol 2015 Sep 15;119(6):643-55

Lane SC, Camera DM, Lassiter DG, Areta JL, Bird SR, Yeo WK, Jeacocke NA, Krook A,
Zierath JR, Burke LM, Hawley JA



体内においては常に様々な変化が起こっていますが、

トレーニング中やトレーニング後は普段と違った変化が起こります。

そうした変化において幾つかのポイントを焦点として見た実験です。

運動前に炭水化物を摂取して高負荷なトレーニング(high-intensity training)をやり、

何も食べずに寝た場合と、

前者が摂取した半分の炭水化物を摂取して高負荷なトレーニングをやり、

残り半分をトレーニング後に摂取した場合の二つの群を比較。

朝起きてから120分の自転車テストをやって測定をした結果、

筋グリコーゲンは当然摂取した群が高いとして、

PGC1α mRNA や PDK4 mRNAなども上昇していましたが、

PPARδのプロモーターのメチル化は摂取しなかった群でのみ向上。

作用の特性を考えると、

たまにはこうしたことをやるのも有では?

というところでしょうか。

2015年11月1日日曜日

運動前の糖質摂取の”神話”を考える

The myths surrounding pre-exercise carbohydrate feeding

Ann Nutr Metab. 2010;57 Suppl 2:18-25.

Jeukendrup AE, Killer SC. 


運動前に何を摂取するべきかというのは本などによって違うのは~だから、

という歴史を説明せしてくれつつ、

糖質を摂取して運動をすることが良い場合なども考えさせてくれます。

トレーニングの目的に応じて変化するべきであるし、

人それぞれ違うという当たり前の話でもあります。

2015年10月31日土曜日

エネルギー欠乏状態はオートファジーにどう作用するか

Modulation of Autophagy Signaling with Resistance Exercise and Protein Ingestion Following Short-Term Energy Deficit

Smiles WJ, Areta JL, Coffey VG, Phillips SM, Moore DR, Stellingwerff T, Burke LM, Hawley JA, Camera DM

Am J Physiol Regul Integr Comp Physiol. 2015 Sep;309(5):R603-12


エネルギーを欠乏させてレジスタンストレーニングを実施してタンパク質を摂取させる、

それによってオートファジーはプラセボとどのような違いがあるのか、

というのを実験。

特に差はないが、初期増殖応答タンパク質1(EGR1)が増えているので、

運動前のことを気にするよりも運動後のタンパク質の摂取が大事、と言えますかね。

2015年10月30日金曜日

加圧トレーニングにおける圧の違いは筋肥大や筋活動に影響を与えるのか

The influence of relative blood flow restriction pressure 

on muscle activation and muscle adaptation


Brittany R. Counts BS, Scott J. Dankel BS, Brian E. Barnett BS, Daeyeol Kim MS,
J. Grant Mouser BS, Kirsten M. Allen BS,Robert S. Thiebaud PhD, Takashi Abe

Muscle Nerve. 2015 Jul 2. doi: 10.1002/mus.24756.

http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/mus.24756/abstract

10年前にこの辺りの基礎研究をやっておりましたので、大体が予想通りの結果です。

そこまで強く血流を制限しないでも狙いとする効果は出るとなっておりますが、

この辺りからは適度な血流制限というのはスロトレのようなものでも出ると考えられるわけで。

そうなると加圧トレーニングの論文は上手く応用して使うことが出来るでしょうね。

なお、低い負荷でも筋肥大しますが、筋力の向上が起こらない、

神経系の適用が不足するので出力向上系のトレーニングの併用、

これが大事になります。

2015年10月14日水曜日

冷水に浸かることは効果的なのか

これまた定期的な気がしますが、

アイシングと呼ばれるものについてです。


COLD WATER IMMERSION




記事を載せているaspetarはカタールのドーハに拠点を置く研究やトレーニングを行う機関で、

近年の活躍は目覚ましいものがあります。

そんな施設があれば、そりゃあかなわない、と思って頂ければ。

日本なんかでは比較にならないレベルで、

世界のトップアスリートなんかも訪れてはトレーニングや研究協力をしています。

そんなaspetarを知っていただければ、

というための記事です。

定期的に記事を書いてくれているので、

それを定期的に読んであれこれと考えればよいかと思います。

なお、

この記事においてはアイシングと呼ばれるものの効果効能を再検討しています。

実際問題、

ここのところ非常に二分しているのがアイシングと呼ばれるものです。

効果があるという意見もあれば逆の意見もある。

マイナスの効果が見られるといったものも。

細かく学びたい人は最後に載ってる論文を読んで頂ければ。

取りあえず、日本人のアイシング万能論はちょっとおかしなレベルの信仰ですよ、

という点に気づいていただければ。

アイシングと呼ばれているもの、

という表記にしているのは日本人のアイシングの定義が曖昧すぎるからです。

水を脚に10分かけるのをアイシングと呼ぶ人もいますが、

あれは正確には水浴びです。

汗を流して汚れを落として気持ちよくなる以外の効果はほとんどありません。

筋肉はそうそう簡単に冷えないようになっていますので、

アイシングというのがどこまで厳しく定義されているのかも考えなおして頂ければ、

と。

まぁ肉離れなどの急性期以外はあまり必要なさそうというのが実感ですね。

ここのところはそうした流れに進んでいる感じもしますので。

2015年10月13日火曜日

REDD1の発現はタンパク質の合成を弱める

Nutrient-Induced Stimulation of Protein Synthesis in Mouse Skeletal Muscle Is Limited by the mTORC1 Repressor REDD1

Bradley S Gordon, David L Williamson, Charles H Lang, Leonard S Jefferson, and Scot R Kimball

J. Nutr. April 1, 2015 vol. 145 no. 4 708-713

http://jn.nutrition.org/content/145/4/708.abstract#fn-1


REDD1(development and DNA damage 1)が発現することで、

栄養が十分に足りていてもmTORC1が制御されるため、

タンパク質の合成が抑制される、というもの。

下の日本基礎老化学会の論文を見ていただければ、

より理解をしやすいかもしれません。

http://www.jsbmg.jp/products/pdf/BG35-3/35-3_11-16.pdf

ミオスタチンやREDD1などによって、

人間の筋肉は肥大しすぎないように制御されているわけですね。

これはエネルギーを多く消費するのが動物にとっては好ましくないと遺伝子で制御しているから、

そのように考えられたりしています。

食料が安定的に生産されるようになったのはここ数千年の話ですし、

この時間は遺伝子レベルで人類の進化などなどの影響を与えるには短すぎるとか。

ですので、

エネルギーは使わない身体が好ましいと脳その他は認識しております。

よって、

運動をするとエネルギーを無駄に使わないで済む体に変化します。

この辺りを理解すると、

競技に応じて食事をどうするべきなのか、

といったことが曖昧ながらも理解できるかもしれませんね。

2015年10月12日月曜日

睡眠と成長ホルモンの関係

Growth hormone secretion during sleep

Y. Takahashi, D. M. Kipnis, and W. H. Daughaday

J Clin Invest. 1968 Sep; 47(9): 2079–2090. doi: 10.1172/JCI105893
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC297368/


成長ホルモンと睡眠の関係を調べた論文です、

1968年のものですので、基礎研究として多くに引用されていますが、

さて、

どこに深夜にゴールデンタイムがあると書かれているのでしょうか。

睡眠後90分以内に上昇をし、

1.5~3.5時間のピークが来るといったことは書かれていますが。

就寝時間が22時~24時といった範囲でのデータがあり、

グラフとしては22時に就寝した人のものがありますが、

深夜0時過ぎにピークが来ていますね。

webで検索をしたところ、

近年では就寝3時間以内の質を高めるといった話があるようですが、

そちらの方が正解と言えるでしょう。

どこからゴールデンタイムなんておかしな話が出てきたのかは不明ですし。

2015年10月11日日曜日

身体が硬いことがエネルギー消費を減らす

The influence of flexibility on the economy of walking and jogging

Dr. Gilbert W. Gleim, Nina S. Stachenfeld and James A. Nicholas


Journal of Orthopaedic Research

Volume 8, Issue 6, pages 814–823, November 1990

http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/jor.1100080606/abstract

身体が柔らかい方が良いと思っている人が多いでしょうが、

残念ながら硬い方が余計なエネルギーを使わずに済むので、

走る際のエネルギー効率は良いということが言えます。

ケガを予防するためにも柔らかい方が良い!!

そう主張される方もいるかと思いますが、

さて、

その根拠はどこかにあるんでしょうか...

2015年10月5日月曜日

プロテインの投与が刺激シグナルにならない可能性

Protein supplementation does not alter intramuscular anabolic signaling or endocrine response after resistance exercise in trained men.


Gonzalez AM, Hoffman JR, Jajtner AR, Townsend JR, Boone CH, Beyer KS, Baker KM, Wells AJ, Church DD, Mangine GT, Oliveira LP, Moon JR,Fukuda DH, Stout JR

Nutr Res. 2015 Sep 10. pii: S0271-5317(15)00219-5. doi: 10.1016/


well-trainedな人でのトレーニングとタンパク質摂取の影響を検討し、

同化作用が進むと思って実験してみたら特に変化がなかったという論文。

mTORC1に対する刺激としては、プロテインの摂取では効果が無さそうなので、

何か別の手法を検討するべきですね。

2015年10月4日日曜日

ビタミンDの摂取が筋肥大や筋力の向上に影響するか

Does vitamin-D intake during resistance training improve the skeletal muscle hypertrophic and strength response in young and elderly men? - a randomized controlled trial.


Nutr Metab (Lond). 2015 Sep 30;12:32

Agergaard J, Trøstrup J, Uth J, Iversen JV, Boesen A, Andersen JL, Schjerling P, Langberg H
結論、しない。ただ、面白いデータは出てますね。
これは摂取する事での悪影響がほかに少ないのであれば、積極的に摂取するべきかもしれません。

2015年9月23日水曜日

急激な筋肉への刺激情報の人間におけるデータ

Co-expression of IGF-1 family members with myogenic regulatory factors following acute damaging muscle-lengthening contractions in humans.


J Physiol. 2008 Nov 15;586(Pt 22):5549-60.

McKay BR, O'Reilly CE, Phillips SM, Tarnopolsky MA, Parise G.

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/18818249

成長ホルモンが分泌されることで筋肉が育つ、

この考えが違うのではないかと指摘されおりますが、

筋肥大に関係しているであろう要因は幾つか考えられております。

その中にmyogenic regulatory factors (MRF) があります。

英語で読むのがアレという方は、

こちらをどうぞ。

参考文献とされている16のデータはこちら

17のデータはこちら

瞬発系競技のアスリートが運動を毎日することの弊害といったものも考えられるデータでしょう。

2015年9月22日火曜日

負荷の違いが遺伝子発現などに与える影響

Effects of different intensities of resistance exercise on regulators of myogenesis.

J Strength Cond Res. 2009 Nov;23(8):2179-87.

Wilborn CD, Taylor LW, Greenwood M, Kreider RB, Willoughby DS.


負荷が高ければトレーニング効果が出るというのは知られていますが、

ではどのような負荷ならば変化が起こるのか、

というのを確認しています。

4 sets of 18-20 repetitions with 60-65% 1 repetition maximum (1RM) and 
4 sets of 8-10 repetitions with 80-85% 1RM.


上記の内容でトレーニングをした結果、

60%の負荷でも遺伝子発現などでの変化が確認されていますので、

負荷が少し低くても回数をこなすことでより良いトレーニングとすることが可能、

という推測ができるかと思います。

2015年9月20日日曜日

年齢経過による関節出力の変化

Age causes a redistribution of joint torques and powers during gait.

J Appl Physiol (1985). 2000 May;88(5):1804-11.

DeVita P, Hortobagyi T.

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/10797145

高齢者と若者では筋肉や関節での力の使い方に違いがある、

というのを観察した論文です。

高齢者になれば若者と同様な出力をするためには、

かなりのトレーニングを実施する必要がありますが、

多くの人がそんなにもトレーニングをせずとも、

そこまで歩く速度に変化が見られないのには何かしら理由があるのであろう、

と。

足首や膝の関節での違いなど、

詳細はご確認ください。

これを再確認したものが以下も論文となります。

The Relationships between Age and Running Biomechanics.

 2015 Aug 7. 

DeVita PFellin RESeay JFIp EStavro NMessier SP.


2015年9月18日金曜日

持久力とは精神力なのか?

http://www.bbc.co.uk/guides/zg9vgk7

BBCの記事となりますが、

人間の持つ精神力は持久力に大いに影響をもたらすと考えられますが、

その辺りを検討してみた記事となっております。

実際、

我慢できるかどうかや、やる気になるかどうかといった、メンタル的なもの、

モチベーションの部分というのはとても重要であると思われますし、

その辺りがもたらす差違は、

究極的の所で大きな違いになってくるのだろうと思われるところです。

2015年9月2日水曜日

植物性と動物性タンパク質による同化作用の違い

The Skeletal Muscle Anabolic Response to Plant- versus Animal-Based Protein Consumption.


http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26224750

J Nutr. 2015 Jul 29. pii: jn204305
van Vliet S, Burd NA, van Loon LJ

植物性プロテインと動物性プロテインの違いはもう少し検討すべきかもしれませんね。まぁロイシンが足りないのなら、落花生でも食べればよいと思う今日この頃です。
総カロリーを気にする必要はありますが。あとは他のサプリメントとの併用ですね。

2015年7月20日月曜日

プラセボ群とコントロール群で持久力を比較(フルテキスト有)

Effects of an Injected Placebo on Endurance Running Performance

Medicine & Science in Sports & Exercise:
August 2015 - Volume 47 - Issue 8 - p 1672–1681
doi: 10.1249/MSS.0000000000000584

ROSS, RAMZY1; GRAY, CINDY M.2; GILL, JASON M. R.1



トレーニングを積んでいる選手を対象として、

プラセボ摂取群とコントロール群では5kmのサイクリングパフォーマンスに変化が出るか

という実験。

研究者はイギリスの方々ですね。

なお、日本人は比較的プラセボの効果が出やすいと言われていますが、

この研究の結果もやはり差が生じたとしています。

モチベーションの向上などが原因と考えられますので、

選手を指導する際には良い練習を行わせる環境づくりや適切な刺激など、

モチベーションのアップといった点も重要であるということですね。

2015年7月10日金曜日

件の赤入れ


すでに一度公開していましたが、

赤入れよりも解説が多いので再度。


”一昔前は、疲労の源として「悪者」扱いされていたエネルギー代謝物質である『乳酸』。その認識が見直されつつあります。”


今から20世紀の初頭や中頃の実験で、

電気を流して強制的に筋肉を動かすという実験の結果。

筋肉に乳酸が大量に蓄積していたのが乳酸疲労物質説の根拠でしたが、

これは乳酸が多いという事を認める話としては活用出来ますが、

乳酸があるから疲労しているとは言い切れません、


”美しすぎる相関性が生んだ思い込み - 乳酸と筋肉疲労

『カエルの筋肉を使って、筋肉の収縮の強さと乳酸の量の継時的な変化を調べました。彼らは、疲労による収縮力の低下と、乳酸の蓄積に、強い直線関係があることを示しました』

筋肉疲労は乳酸が原因であるとする説は研究現場で提唱されてきましたが、それが広く一般に信じられるようになったのは、1冊の書籍の影響が大きかったようです…アーサー・リディアードは、たいへん有名な長距離走コーチで、優秀な選手を数多く育てました。…リディアードが1983年に出版した書籍の中で、乳酸は運動選手のパフォーマンスにも、健康にも悪いと説明したのです。スポーツ科学や競技指導者の間では乳酸悪者説が定説になったのは、リディアードの書籍が少なからず影響していました…』”

詳細は上のリンクを読んで頂くとしまして、

筋肉に乳酸が多く溜まっているからといって、

それが疲労の原因とは断定できません、

何故なら、増えている物質が一方で減ってる物質もあるからです。

乳酸以外にも増えている物質はあります。

そうした点を無視して乳酸が取り上げられたのは、

とても説明が簡単だったからでしょう。

ということで、

乳酸と疲労が大きな関係性は無いという話が1990年代には増え、

2004年にSCIENCEに掲載された一本の論文により、

研究の現場では乳酸疲労説はなくなりました。

不勉強か専門が運動生理学ではない人にはまだ浸透していなかったりしますが。

この基本を理解した上で続きを。



”それは、糖質が代謝されエネルギーを生み出す過程(ATP回路)で産生される乳酸は、エネルギーとして再利用される(最終的に、水と二酸化炭素に分解)ことがわかってきたからです。

無酸素運動(嫌気的運動)時、つまり、速筋を大いに使う高速運動や高強度の抗重力運動をした場合に、乳酸は大量に発生します。乳酸が筋肉に蓄積されていくと組織が酸性に傾き、筋肉の働きが抑制されるという弊害が伴います。だから、悪者として見られてきたわけです。

間違ってはいけないのは、再利用されるからと言って、たくさん蓄積されると筋肉が動かなくなるという概念は変わらないということ。”



糖質が体内に増えて解糖が進むor糖質を利用するために解糖が進む、

この二つが大きな乳酸増加の原因です。

無酸素運動というのは運動中に酸素を介したエネルギー産生が行われないといった意味ですが、

運動中は必ず酸素を利用するためそのようなものは存在しませんので、

東大の八田先生は無酸素運動という用語の使用をしないことを提言されています。

呼吸を止めても運動は出来るように体内に酸素の蓄積がある、といった話も。

そして上記で間違っているのは、


”たくさん蓄積されると筋肉が動かなくなるという概念は変わらない”


この点ですね。

上記のリンクでもありましたように、水素イオンの蓄積や体温の向上、ナトリウムバランスの変化などが筋肉を動かなくする原因と考えられていますので、

この概念は既に昔のものです。

乳酸を経口摂取することで運動時間が伸びた、

そうした実験をされている方もいますので。

次。


”これら身体の反応は、脳やカラダを守るためと言われています。自分の意思で上限なく運動の強度を高めることができるとしたら、意思の強さが競技力になってきますし、カラダは破壊される一方です。身体のメカニズムは、自らの意思とは別次元で機能しているのです。「カラダの保護機能に対抗するのが、トレーニングである」と言っても過言ではないと私は思っています。”


現状、これ以上の考えはありませんし、これがベストな考えだと思われます。

乳酸が生成される事で糖の利用が進みますが、

脳は糖を多く利用するので糖の減少は運動継続の大きな制限要因になります。

もちろん、ケトン体の利用などもありますが高負荷で考えると制限要因でしょう。

保護機能に対抗するかどうかは知りませんが、

機能が働き始めるまでの閾値をトレーニングで高めるのが重要なのは間違いありません。




”— 主に中距離走に該当しますが、長距離走といえども、最初のスタートダッシュやレース途中や最後のスパートの場面では同じことが言えます—
〇LT値(乳酸閾値)〇

知っている方、多くいらっしゃると思いますが、ランニングのスピードを徐々に上げていくと乳酸が急に多く発生するポイント(走速度)があり、これをLT値と言います。

このLT値を簡単に説明すると、これ以上スピードを上げると、どんどん息が苦しくなっていくポイント(速度)のようなものです(酸素摂取量ともほぼ比例している)。


走力に関係する様々な体力や身体機能を向上させることで、LT値となる走速度を高めることができます。同じ速度で走った場合、乳酸の発生が少ないほうが断然有利というわけです。(OBLAという概念が実践的ですが、これについては、また今度、書きたいと思います)”


運動開始時のエネルギー源に関しては、

糖質というよりもクレアチンリン酸の方が大きく関わると思われますし、

その他の場面においてもクレアチンリン酸が重要であると考えられます。

日本では研究があまり進んでいませんが、

1990年代くらいまでに欧米では研究し尽された感じがする分野です。

LT値に関しては2mmol程度の数値であり会話が出来る程度に呼吸が軽く乱れるかな、

といったレベルです。ここではジワジワと上がるので、

急に多く発生するポイントはOBLA(4mmol)ですね。

なお乳酸はC3H6O3ですので、1mmolには0.09008g含まれていることになります。

計算間違ってたら後で訂正を。

分子量の話が高校の化学の授業ですね。

また、乳酸は常に解糖が行われているわけで、


”急に多く発生する”


という表現はよろしくありません。

2mmolで例にして使うと、

10作って8使う人
25作って23使う人

この二人ではどちらも数値としては2が残りますが、

発生量としては後者の方が多くなります。

この点に関しては筋中と血中の量を測定するのが難しいので何とも言えませんが、

解糖が利用を上回り始める値というのが表現としては適切でしょう。

また、


”同じ速度で走った場合、乳酸の発生が少ないほうが断然有利”


といのも書かれていますが、

ラストなどでは多い方が断然好ましいです。

これは筋量が多いことが乳酸値を高めることの一つの要因となりますので、

筋量が少ない小学生や中学生は高い数値になりません。

数年前、

スピードスケートの高木選手がオリンピック代表になった時に、

乳酸が作られない身体だから強い、

そのようにテレビ朝日が解説しておりましたが、

そうではなくて中学生で筋量が少ないから測定しても出てこない、

という話が適切でした。


”このLT値を簡単に説明すると、これ以上スピードを上げると、どんどん息が苦しくなっていくポイント(速度)のようなものです”


簡単に説明していないし間違っているし、ということがなんとなく分かって頂けるかと。

呼吸が苦しくなるのは酸素が不足するというよりは二酸化炭素の排出が多くなる方が要因としては大きいと考えられます。

それは最大酸素摂取量の測定を見て頂ければ分かりますが、

通常時の20倍程度の酸素の摂取をしている一方で、

二酸化炭素の排出はそれを上回るので。

CO2の排出が上回るほどの解糖が行われている、

とも言えるでしょう。

もちろん、酸素は筋肉以外の器官でも使われますので不足するような可能性もありますが、

運動中の筋肉で酸素不足になるようなことはありません、

ですので、運動の継続が出来なくなるのは、

酸素は十分にあるけどミトコンドリアでの利用が間に合わない出来ない状態、

という表現が適切でしょう。


”◯耐乳酸能力◯

簡単に言うと、「筋肉中や身体全体で、どれだけの乳酸を溜めることができるか?」という運動器としての貯蓄量と「乳酸が限界値まで溜まった飽和状態で、どれだけ筋肉を動かし続けることができるか?」という運動機能としての能力を指しています。つまりは、

① 自らの意思で筋肉を動かせる限界ギリギリの乳酸蓄積のキャパ(容量)を増やすこと
② 同じ乳酸蓄積量でも、速く または 力強く筋肉を動かす能力を高めること

①は、筋肉量を増やすとキャパは増えるのですが、中長距離の場合は、筋肉のいたずらな増量は不利になる場合があるので、難しいのです。だから、イメージとしては②になり、耐乳酸能力を高めるために、乳酸蓄積量限界ギリギリ、いや、それ以上の強度でトレーニングをするしかないわけです。”


簡単に言うと間違っているものが再び登場です。

まず、耐乳酸と言っている時点で乳酸が疲労物質であると思っている点を感じられますし、

先述したとおりに運動の継続低下に関しては乳酸以外のものが複数関与していますので、

しっかりと理解していればそもそもに耐乳酸能力という言葉自体が存在しない、

ということが分かるかと思います。

ですので、①も②も何を言っているのか分かりません。


”自らの意志で筋肉を動かせる限界ギリギリ”


人間の運動って全てが随意運動ですか?

違いますよね。動かそうとする意志があれば動くというものではありません。

言いたい事は何となく分かりますが、

”筋肉のいたずらな増量は不利になる場合がある”

そもそもに筋肉がそんなに簡単に増えません。

ですので、

まずは筋量を増やしてみてから言った方が良いでしょう。

定期的に問題として出していますが

体重が一か月で1kg増えたとしても、

筋肉がどれだけ増えたかは不明です。
2か月やって明確に違いが分かる程度です(成長期の若者を除く)。

筋肉が増えて体重が重くなったり関節が動きにくくなる、

本当にそういった状態になっている人を見たことは、

持久的な運動をしている人にはほとんどいないと考えられます。

むしろもっと筋量を増やして乳酸値の最大を高めた方が良いでしょう。

出力を上げた方が勝負になります。

日本人は軽自動車の車体を軽くして勝負しようとしていますけど、

世界の選手はF1の車体を空気抵抗を抑え、軽くし、燃料タンクを多くして勝負しようとしています。

エンジンがより優れたもので燃料タンクも大きい、

それでは勝てるはずがありません。

そうした点を考えてトレーニングをしていけば、

きっと世界と勝負が出来る選手は登場すると思います。

②に関しては、

”同じ乳酸蓄積量でも、速く または 力強く筋肉を動かす能力を高めること”

と言っていますが、

先ほどのLTの話はどこにいったというくらいの急展開ですので、

もう手の施しようがありません。

残念です。

技術的な能力向上、ランニングエコノミーの改善ということを言いたいのでしょうか。

だとしても改善されたら乳酸値は下がるはずなので、

言っている意味がやはり分かりません。



”◯中間筋繊維◯
ヒトの筋肉には、通称「中間筋」と言われる筋肉が何%かあります。この筋繊維は、本来は速筋なのですが、トレーニングによって遅筋にもなりえます(正しくは、性質に近づくというニュアンス)。その中間筋を速筋と遅筋のどちらの特性にするか?これもトレーニングの重要な狙いになります。これは、タイプによりますね。中距離走のようなスピードが求められる競技では、速筋が少ない選手は、中間筋を速筋寄りに傾けるしかありません。速筋が多いマラソン選手は、その逆で、遅筋寄り
に傾けることになります。「マラソン練習をするとスピードがなくなる」と言われる理由でもあります”



正しくは、~というニュアンスという表現が如何なものかと思いますが、

速筋→白筋。
遅筋→赤筋。

このような別の呼び方があることは聞いたことがあるかと思います。

これは速筋に毛細血管が少ないことが原因です。

毛細血管がエネルギーを運んだり酸素や二酸化炭素の運搬には必要ですが、

それが少ない。

また、エネルギーを作り出すミトコンドリアも少ない。

こうした点が速筋の持久力が低い大きな理由です。

筋の特性としては、

速筋→大きな力を出せるが持久力は低い
遅筋→大きな力を出せないが持久力は高い

このように分類できます。

これだけを見て速く走るためのトレーニングを考えるならば、

速筋の持久力を高めるか遅筋の出力を高めるしかありません。

しかし、遅筋の出力はほとんど高まりませんので、

速筋の持久力を高める事に狙いを絞るのがベストだと考えられます。
そうしたトレーニングを行って毛細血管が増えた結果、

中間筋(ピンク筋)と呼ばれるものが出来上がっていきます。
これはマラソンであれ何であれ、
速筋の持久力が高ければ高いほどどんな距離も速く走れるので、
どの種目においても狙いは速筋の持久力向上です。
もちろん遅筋も同時に使われるので鍛える必要はありますが、
速筋をトレーニングする負荷で鍛えれば十分に鍛えられます。

効率を考えるとLSDと呼ばれる1km6~7分程度の呼吸が一切乱れない、

乳酸値が上昇しないペースでの長時間の運動が効果的ですが、

ハーフマラソンやフルマラソン以外の種目においては、

日本のトップや世界と勝負するレベルに達するまではそこまで重視しなくても良いかと思われます。



”「マラソン練習をするとスピードがなくなる」と言われる理由でもあります”



これまでの話を理解頂ければ、

そのマラソン練習が間違っているだけでは?

という疑問が湧くのではないかと思います。



”◯乳酸再利用能力◯
乳酸をエネルギーとして再利用するのは、主に遅筋と言われています。したがって、中距離走のレース場面では、乳酸を再利用する代謝回路はあまり機能しないかもしれません(何となくの想像)。
しかし、遅筋をより働かせる長距離走では、乳酸はエネルギーとなりえます。ただし、このエネルギー代謝回路は、トレーニングしないと機能は向上しません(ミトコンドリアの増量など)。
とくに、スピードを上げて走るには、そのためのトレーニングが必要です。マラソン選手でも積極的に乳酸を発生させて、利用するというトレーニングを積んだほうが良いと思います。”



賢明なる読者の皆様はここまで来たらすでに理解されていると思いますが、



”乳酸をエネルギーとして再利用するのは、主に遅筋と言われています”


乳酸を酸素を用いてエネルギーへと変換するためのミトコンドリアが速筋には少ないので、

どうしても遅筋で使うことになるわけですが、

これはとても勿体ないことですね。

速筋に毛細血管とミトコンドリアが多数あれば、

速筋でも使えて速いスピードの維持が可能になると思われます。

また、脂質の利用も高まりますので、

やはりスピードの維持能力が向上すると思われます。

ミトコンドリアが少ないということは、脂質の利用能力が低いという事でもありますので。



”「ロング走を減らして、スピード練習をたくさん取り入れてパフォーマンスが上がった」という記事が出て話題になっています。トレーニングの詳細を知らないので、一概には言えませんが、こうした一連の「糖代謝メカニズムと筋肉の発達(ミトコンドリア増加)」に起因していると私は推察していま
す。”


適切な負荷のトレーニングを実施しただけでしょう。

ロング走でもOBLAペースでやっていれば効果的ですので。

日本では何故かLTペースでの走り込みが奨励されていますが、

週に数日練習する一般の市民ランナーの方々がマラソンをベストタイムで走る能力の向上と、

アスリートが速く走るための能力向上のトレーニングを同一で考えてしまっています。

今までのトレーニングがマラソンを完走するのが目的の練習だったと考えれば、

10000を速く走る練習を取り入れたら速くなったというのは当然でしょう。



”あるスポーツ科学の研究者から面白いデータを紹介していただきました。『BCAAを摂取すると乳酸の上昇を抑えられる』というのです。筋肉が、BCAAをエネルギー源として利用できるのが理由です。”


大塚製薬さんがアミノバリューで研究され発表しているデータですね。

商品が作られたのが12年前の2003年ですので、

疲労物質である乳酸を減らるという考えで作られたと推測されますが、

その辺りの考えが未だに残ってしまっているのでしょうかね。



”そう考えると、中長距離走のレースで「簡単な記録短縮の方法」として単純な発想が浮かんできます。中長距離のパフォーマンスを高めるためには、スピード練習を積極的に取り入れて速筋を鍛えながら、ATP回路を発達させて乳酸が出せるスピードランナーに近づけていくことが求められます。(ジュニア世代から長い距離を走る練習をする傾向にあり、乳酸を出せないスピード不足のアスリート・ランナーが増えている)”


そもそもにジュニア世代は乳酸値が高まらないというのは先述の通りです。

ですのでスピード練習をやればスピードが高まるわけでもないですので、

年齢に適した練習をやればよいだけです。

成長期を終えてから役に立つという点を考えれば、

徹底的に技術を磨くべきでしょう。

欧米では多種目のスポーツを経験させていますし。



”その際、高強度のスピード練習前と練習中にBCAAを積極的に摂取することで、乳酸の発生を抑えて速く長く走り続けることができるというものです。つまり、速筋を鍛えやすくなります。”



ミトコンドリアの発現を考えますと、

乳酸値がそこそこ高いのが理想となります。

刺激因子として考えられますので。

ただ、乳酸値が高い状態が効果的なのか、

乳酸そのものなのかは不明です。

ですので、乳酸の発生を抑えて速く長く走れば良いかとなりますと、

そうでもない、と言えます。

速筋を鍛えやすくなるかと言われると、

そうでもない。



”「BCAAを摂取しながらのトレーニングで、速筋をガンガン鍛え、レース前やレース中にもBCAAを摂取することで乳酸の発生を抑え、パファーマンスの向上が期待できる」と考えます。”


乳酸が疲労物質と思い込んでいるようなコメントですよね。

最初の文章はどこにいったのか。

乳酸値が高い方が良いというのもあるわけですが、

そうした話を知らないとこういう結論になりますね。



”単純過ぎますかね!?”


はい。



ということで、

かなりの長文となりましたが、

徹底的に赤入れをさせて頂きました。

これを書くのに要した時間が1時間半くらいなんですが、

ご質問、異論は多々あるかと思いますが、

疲れております。

元気な時でしたら返事いたします。

そこを御理解してコメント、リプライをどうぞ。

2015年6月27日土曜日

コンプレッションウェアは効果があるのでしょうか

Lower-leg compression, running mechanics, and economy in trained distance runners.


Int J Sports Physiol Perform. 2015 Jan;10(1):76-83. doi: 10.1123/ijspp.2014-0003. Epub 2014 Jun 6.

Stickford AS1, Chapman RF, Johnston JD, Stager JM.

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24911991

どうなんですかね。

酸素摂取やランニングエコノミーその他に違いが出ていないので、

効果は特にないという相変わらずの結果ですね。


2015年6月26日金曜日

高負荷のトレーニングで脂肪の酸化能力は向上するか

The effect of high-intensity training on mitochondrial fat oxidation in skeletal muscle and subcutaneous adipose tissue.


Larsen S, Danielsen JH, Søndergård SD, Søgaard D, Vigelsoe A, Dybboe R, Skaaby S, Dela F, Helge JW.

Scand J Med Sci Sports. 2015 Feb;25(1):e59-69. doi: 10.1111/sms.12252. Epub 2014 May 21.


結論。ミトコンドリアは増えるし酸素摂取量は増えるけど、酸化的リン酸化も向上するけど、

mitochondrial fat oxidation はほとんど変化しない。

”酸化的リン酸化(さんかてきリンさんか、oxidative phosphorylation)とは、電子伝達系に共役して起こる一連のリン酸化(ATPの生合成)反応を指す。細胞内で起こる呼吸に関連した現象で、高エネルギー化合物のATPを産生する回路の一つ。好気性生物における、エネルギーを産生するための代謝の頂点といわれ、糖質脂質アミノ酸などの代謝がこの反応に収束する。”


アフリカの長距離選手に遺伝子の優位性はあるのか

Genetic aspects of athletic performance: the African runners phenomenon

Rodrigo Luiz Vancini, João Bosco Pesquero, Rafael Júlio Fachina,, Marília dos Santos Andrade, João Paulo Borin, Paulo César Montagner,and Claudio Andre Barbosa de Lira
J Sports Med. 2014; 5: 123–127.
Published online 2014 May 20. doi: 10.2147/OAJSM.S61361
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4037248/


結論。特に無い。

遺伝子的な特性で速いというのは、ただの言い訳でしかない現状です。

勿論、何かしら新たに発見される可能性はありますが、

現状の調査では出てきていません。

この遺伝子を持っている人は速いと言われる遺伝子が近年ありますが、

特別に多いわけでも無さそうだ、と。

2015年6月19日金曜日

酸素摂取量と貧血の話、ですかね

最大酸素摂取量の話をこの所よくしているので、少々。

話を見ていて聞いていて思うのが、

全身に取り込んだ酸素の量とかいう当たり前の話は分かっているけれども、

何で取り込めるのかという点が分かっていない傾向の人が多いことです。

肺の容量やら肺活量やらといった話をされる人も多いので、

何ともアレな話を覚えてしまわないようにしてもらうために基本的な点を。



取りあえず先に結論。

どんな負荷でもトレーニングすれば酸素摂取量は向上します。

酸素摂取量が向上しないトレーニングなどはありません。

ただ、最も向上させるようなトレーニングをしているかどうか、この違いがあるだけ。

速く走るためには細胞を増やしていく必要がありますが、

その結果として酸素摂取量が向上していきます。



以下、説明を読んで理解したい人は。



体内に酸素を取り込むというのは、

肺胞における交換の能力、

次に酸素を送る能力があり、

細胞においての取り込む能力(交換する能力)、

上記の点を理解して頂ければよろしいかと思います。

つまり、心肺機能というのは中心部にある心臓や肺も大事ではあるが、

末端の細胞の能力というのも関わっているということです。

酸素を送り込む細胞が少なければ当然ながら高まりません。

末端の細胞においては動静脈酸素較差というのが指標とされますが、

これも酸素摂取能力にはとても大事なものです。

こうした点が理解できると最大酸素摂取量のには何が必要か?

そう聞かれた際に筋肉というのが出てくるようになるかと思います。

もちろん心拍出量などの心臓の能力も大事ではありますが、

これはトレーニング初期での適応によって早い段階である程度の能力に高まります。

ですので、

次の段階に進むということを考えると筋肉における酸素の交換、

という点に焦点を当てる事になります。

ここで大事なのは運搬するためのヘモグロビンと血液、

エネルギーを生産するミトコンドリアです。

貧血で走れないというのはヘモグロビンが鉄を結合する量が減ってしまい、

細胞に酸素を送れないので運動が継続できないということです。

ヘモグロビンはタンパク質で構成されており、

その中には鉄原子で構成されるヘムがあって、これが酸素を結合します。

貧血の人には鉄が不足している場合もあれば、

ヘモグロビンそのものが少ない場合もあるというのは、このためです。

なお、肺での酸素と二酸化炭素の交換は酸素分圧の話ですので、

鍛えてどうこうといった話にはならないと思われます。

肺を鍛えるという表現はありますが、

酸素を多く取り込むためには肺の話だけではなく、

全身の細胞を増やすというのが大事なわけです。



酸素の取り込みだけでは持久力の話を全て出来るわけではありませんので、

その点もお間違えなく。

取り込む能力が高いのは有利ですが、

その数値が高いからといって持久力が高いとも言えないのです。

理由は糖質の利用といった観点からお考えください。



ミトコンドリアや毛細血管の増加に関する話はまた別の機会に。

2015年6月13日土曜日

A Review of Resistance Training-Induced Changes in Skeletal Muscle Protein Synthesis and Their Contribution to Hypertrophy


Felipe Damas, Stuart Phillips, Felipe Cassaro Vechin, Carlos Ugrinowitsch

Volume 45Issue 6pp 801-807

http://link.springer.com/article/10.1007/s40279-015-0320-0

レジスタンストレーニングに関するレビューですが、

referenceが50近くあり、孫引きして基礎的な部分を学ぶには最適かと思います。

結局のところ、

今でも筋肉がどうして肥大するのかといった点は疑問がまだまだあるわけです。

abstの序盤に筋肉を肥大する因子はトレーニングとタンパク質の投与、

そういった事が書かれていますが、

意外とこの点を忘れている人が未だに多いわけです。

トレーニングが終わった直後にタンパク質を摂取すると言われても、

全てのセットが終わった食後ではなく、

クーリングダウンなどの一連の運動が終わってからという認識の人も多いですね。

それが良いのかどうかを深く考えたいのであれば、

referenceを参考に学んでいくのが良いでしょう。

2015年6月2日火曜日

mTOR is necessary for proper satellite cell activity and skeletal muscle regeneration

 2015 Jul 17;463(1-2):102-8. doi: 10.1016/j.bbrc.2015.05.032. Epub 2015 May 18

Zhang P, Liang X, Shan T, Jiang Q, Deng C, Zheng R, Kuang S



筋肉が肥大したりする理由は、細胞への刺激に応じて様々な物質が体内で生成されるからです。

その中で最も基礎となる重要なものがmTORであり、

これを如何にして刺激するかがトレーニング効果を高めるためには重要になります。

まぁ一般的にはそこまで深くトレーニングを考える必要も無いでしょうが、

mTORがどのようにして刺激されるのか、

何が抑制するのかという点を少し知るだけで、

現状のトレーニングにおける問題点が見つかると思います。

2015年6月1日月曜日

筋肉におけるグリコーゲンの回復にどれくらいの時間が掛かるのか

Enhanced Glycogen Storage of a Subcellular Hot Spot in Human Skeletal Muscle during Early Recovery from Eccentric Contractions.

PLoS One 2015 May 21;10(5):e0127808. doi: 10.1371/journal.pone.0127808. eCollection 2015

Nielsen JFarup JRahbek SKde Paoli FVVissing K.

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25996774


運動後のグリコーゲンの回復速度というのは24~48時間というのが一般に言われていますが、

この回復というものに関して、速筋と遅筋でしっかりと考えたことがありますか?

という疑問に答えてくれているのがこちらの論文。

速筋と遅筋がどちらも同時に回復すると考えてしまっている人がほとんどですから、

前日にグリコーゲンを減らすような負荷の高い運動をしてしまう。

その結果、

翌日には回復しないのでパフォーマンスが下がる、

といった話が言えます。

2015年5月14日木曜日

説明したものはちゃんと伝わっているのか

本日は真面目に指導する際に起こるズレについての話。

選手に対して指導者が説明する、

もしくは選手が他の人から感覚の説明や練習のイメージなどを説明された時、

言葉での説明が全て正しく伝わるとは限りません。

これは話をする側と聞く側が同じ感覚を持っていない事が原因です。

例えば選手に対して今日の練習は「a+b」と説明します。

「a+b=12」これが今日の練習内容だと言われた選手は、

aにどのような数字を入れるか。

これは指導者が5と考えて5と説明しても、

4.2や5.8、

場合によっては10なんかが入ってしまうこともあります。

受け取る側の感覚が発する側とまったく同じで無ければ、

ズレは生じます。

このズレを小さくする作業が説明する側と受け取る側で必要になります。

数学なんかでは0≦a≦4といった定義をする事により、

その誤差は少なくなります。

しかし、

この範囲だけでは分数にしたりする可能性もあるので、

まだまだ範囲は広すぎます。

ですので、

aは自然数であるといった定義もさらにしないとなりません。

そんなもん選手は分かっている、

そう思う人もいるかもしれませんが、

感覚の違いというのは想像以上い大きいです。

ですので、

a+b=12という説明をして、

aは4より小さい自然数であってという定義でも不足している可能性を考え、

さらに範囲を狭める作業をする。

そこまでやって、

言いたいことがほぼ全て伝わります。

自分の感覚や知識と相手の感覚と知識は一致しない、

そこを認識してからの指導というのが大事です。

思ったように記録が伸びない場合などでは、

見た目では出来ているように思われることが、

実際には出来ていないということが原因だったりします。

自分の言っている事をイメージしているそのまま伝えるのは難しい、

そうした事が分かって頂ければ。

なお、

選手と指導者のフィーリングが一致しやすいというのはあると思います。

そうしたペアが理想的なんだろうと思いますが、

その際は指導者の能力というのが選手の伸びを大いに左右することになりますので、

選手は指導者の能力を上回るものを求めているのかな、

という疑問は持ち、

新たな技術を磨くために他の指導者に倣ったりするというのは必要だと思います。

感覚だけ磨いていれば良いというものでもありませんので。

2015年4月17日金曜日

世界記録保持者の身体構成


Skeletal Muscle Signature of a Champion Sprint Runner

室内で行われる60mハードルの世界記録保持者であるコリン・ジャクソンの身体を測定した論文です。MHC IIx muscle fibersが多いとトップスプリンターになれる、
そうしたことが言えるかもしれません。
よくある論文ではトップアスリートを数人抽出して、
それを平均化して数値を見ていますが、
そうした論文の問題点は下位の選手をトップアスリートと表現して良いか、
というところにあります。
9秒台で走る選手をトップアスリートと呼ぶのは間違いないでしょうが、
その中で9秒99の選手をトップと呼べるのか。
言うなればその集団の中で遅い人のデータが見えるものを見えなくしている可能性がある、
そういう話です。それと比べるとこの論文はとても分かりやすくて良いかと思います。

2015年4月11日土曜日

血流制限(加圧)による筋肉の活動量や血管の酸化能力について

Effects of blood flow restriction duration on muscle activation and microvascular oxygenation during low-volume isometric exercise.


Clin Physiol Funct Imaging. 2015 Jan 7.

Cayot TELauver JDSilette CRScheuermann BW.

近年、加圧トレーニングという言葉が広まってきまして、
そのトレーニング方法は知っている人が増えました。
しかし、どうやるのが最も効果的なトレーニングになるのかは、
まだまだ研究途上です。
ということで、こちらの論文では加圧した状態での筋中を調べて、
加圧トレーニングは効果があるのか、どれくらいの時間が必要なのか、
そういった点を調べています。
この加圧トレーニングは特殊な環境を体内において作り出しますが、
こうした環境になると何故にトレーニング効果が高まるのか、
そうした話へとつなげて考えていくと非常に面白いと思います。

2015年4月9日木曜日

ジクロロ酢酸摂取による運動中の乳酸蓄積の低下はミトコンドリアの増大を減衰させる

ジクロロ酢酸摂取による運動中の乳酸蓄積の低下はミトコンドリアの増大を減衰させる

星野 太佑, 田村 優樹, 増田 紘之, 八田 秀雄

体力科学
Vol. 63 (2014) No. 1 p. 61


トレーニング中に乳酸が蓄積することがトレーニング効果の一つとなる。
そういった解釈が出来るかと思います。
運動中に乳酸が溜まってつらいという人には、
ジクロロ酢酸を摂取してから運動してみれば良いというアドバイスが出来ますね。
それによる運動持続時間の変化などはとても興味深いデータとなることでしょう。
こんなことを書くと、試合の当日にジクロロ酢酸を摂取する人が出てきそうで不安ですね。

多分、効果ないですよ。

2015年4月8日水曜日

必須アミノ酸と炭水化物の摂取が与える影響

Essential amino acid and carbohydrate ingestion prior to resistance exercise does not enhance post-exercise muscle protein synthesis 


J Appl Physiol (June 5, 2008)

Satoshi Fujita , Hans C. Dreyer, Micah J. Drummond, Erin L. Glynn , Elena Volpi , and Blake B. Rasmussen

「レジスタンストレーニングの前に必須アミノ酸と炭水化物の投与しても、
トレーニング後の筋肉におけるタンパク質合成を高めない」というのがタイトルの訳になります。


運動の1時間前に投与した群と比較して、2時間後に大きな差はなかった、
というタイトルになっておりますが、中身をじっくりと読まないとダメな論文です。
実験のデザインによる問題があったり、2時間後に差がない事にどのような意味があるのか、
そうした疑問がdiscussionにおいて語られています。
運動を開始するまでに消費してしまった可能性など、
実験をするという難しさや測定データから見えるものをどのように捉えるか。
様々なことを考えられる論文かと思います。

まぁ摂取した方が良いだろうし、さらには運動後に素早く摂取する事も大事である、
そのような結論につながるかと思いますが、
reference論文にも興味深いものが多いですし、
じっくりとお読みいただければよろしいかと思います。

2015年4月7日火曜日

トレーニング後の乳酸の摂取がグリコーゲン量にどのような影響を与えるか

Chronic Post-Exercise Lactate Administration with Endurance Training Increases Glycogen Concentration and Monocarboxylate Transporter 1 Protein in Mouse White Muscle

Daisuke HOSHINO, Tatsuya HANAWA, Yumiko TAKAHASHI, Hiroyuki MASUDA, Mai KATO, Hideo HATTA

八田秀雄先生の研究室が出された論文。

八田研究室のサイトには

「持久的トレーニングを行った後に乳酸を飲ませることにより、筋グリコーゲンと肝グリコーゲン、MCT1が増えました。また筋グリコーゲンの増え方とMCT1の増え方に関係があるようです。」

というコメントが掲載されております。
トレーニングによって何を狙っているのか、
それを細かく考えるための土台作りには必要な話ですね。
MCT1やMCT4といった輸送単体の変化など、
細かすぎる話かもしれませんが知っておいて損は無い。
それらがトレーニングや食事によってどのように変化するか、
そうした細かい話の積み重ねがトレーニング効果を最大限に高め、
自らのもつ最大限の力を発揮できるようになるわけですので。

2015年4月3日金曜日

水分補給のタイミングとその中身を考える

サッカーにおける水分補給を考える

元々の記事はサッカーにおける水分補給について書かれていますが、
なかなか面白い内容となっております。
かいつまんで説明すれば、
汗をかく量は人それぞれなので、この補給方法が正しいというものは無い。
人によって汗の成分なども異なるし、運動前の水分補給なども違うので、
個人個人が自らに適した摂取方法を考えるのが大事である、
そうしたことが述べられています。
摂取するものの味、温度、量や内容など人それぞれに適したものがある。
まぁ当然ですね。その辺りのベストなものを見つけるのも練習の一つとなるかと思われます。
ベストなものを摂取することで練習や試合のパフォーマンスを高めることにつながるので。

2015年4月2日木曜日

水分摂取と体温変化を考える


炭酸水による口腔への刺激が深部・末梢体温に及ぼす作用

日本栄養・食糧学会誌
Vol. 67 (2014) No. 1 p. 19-25

水分補給に何を求めるかによって、その補給方法は異なってくると思いますが、
体温を下げるという事を求める中には冷たいものを補給するか、
上記の論文のように炭酸水を摂取するという方法が検討されるわけです。
失われた水分の補給には満腹感を生む炭酸水は不向きとされておりますし、
エネルギーを補給するという観点で言えば、
これまた素早く摂取するという事には炭酸水は不向きです。
練習前に体温を下げておきたいので、そうした理由がしっかりしていれば良いでしょうし、
実験的に運動の途中に摂取するのも有りでしょう。
何のための摂取なのか、ここがポイントになります。

2015年4月1日水曜日

ストレッチは疲労回復に効果的なのか

15年前の論文なので乳酸に関する説明に現在とは解釈が異なる点が多々見られますが、考え方の一つの参考としては使えるかと思います。激運動後の回復を如何にして行うかというのが日々のトレーニングには重要ですので、その点を考える材料に。

ストレッチングの筋疲労回復に関する研究


高知リハビリテーション学院紀要
2, 1-7, 2001-03-31
坂上 昇ら

2015年1月14日水曜日

クーリングダウンを考える

練習前にウォーミングアップをやることで、

筋温を高めたり腱の弾性や内臓を~というのはなんとなく理解されていることでしょう。

やらないよりもやった方が確実にパフォーマンスが上がります。

寝坊してアップが不足したら自己ベストが出た、

そういう話もよく耳にしますけれども、、

それらは普段のアップがおかしいのか、

その記録が出た大会までの練習が良かったのか、

などなど考えられるパターンは様々です。

その一方で、

クーリングダウンの話に関しては、

翌日の疲労を抑えるという話は聞きますけれども、

何で?

という疑問に答えるようなものがありません。

一昔前までは乳酸が疲労物質であるからという意見が多く、

クーリングダウンは乳酸値を素早く減少させることを目的としてあれこれと実験が行われてきました。

まぁ近年では乳酸が疲労物質ではないとされていますので、

そうした実験の意味が見えなくなってしまいました。

乳酸話はこちらをどうぞ
http://tf-ver3.blogspot.jp/2014/11/blog-post.html

乳酸値は1時間もしたら通常の値に戻りますので、

一日にレースが数本ある場合ではなければ、

特に気にするようなこともありません。

むしろ、エネルギーの回復や筋疲労や脳疲労を取り除くのが大事になることでしょうが、

それは今後の研究課題になっていくと思われます。

さて、当初の目的であるクーリングダウンを考えるということですが、

取りあえず検索して出てきました数件の例をご覧ください。

その1

 http://www.nissan-stadium.jp/nsaa/special09.php

・クーリングダウンを怠ると、乳酸が体内に蓄積します。これが、翌日に疲労感を感じてしまったりする原因でもあり、これが継続してしまうと慢性疲労になってしまいます。
・クーリングダウンによって、損傷の回復を早めることはできますが、怠ってしまうと筋肉痛が発生し、長引いてしまいます
・交感神経をゆっくり休めるためのクーリングダウンを怠ると、気持ちだけやる気満々の状態が継続してしまい、他のことに集中できなかったりします。

その2

https://www.qupio.jp/1609?category=exercise


◆クーリングダウンの効能

〈1〉運動やスポーツ直後の心肺的リスクを軽減
〈2〉筋肉の疲労回復を促進
・運動を急に止めずに、ジョギングなどで少しの間軽い負荷をかけることは、筋肉中に溜まる疲労物質を取り除くためにも有効といわれています。 さらに、ストレッチによって筋肉の柔軟性を取り戻せば、損傷した筋肉の回復を早め、筋肉痛を予防・軽減することができます。

その3

http://www.know-dt.com/Bodypart/pretrain/060_cdown.html


激しい運動を行うと、人間の体内には乳酸という疲労物質がたまってきます。だから運動を急に停止すると、この乳酸が筋肉などの組織にたまったままなかなか処理されなくなってしまうのです。

その4


練習や試合直後、激しい運動を突然ストップすると筋(特に脚を中心に)に血液が貯留してしまうため、クーリングダウンを行わずに練習を終了してしまうと、筋内に乳酸(疲労物質)が蓄積し、疲労回復を妨げてしまいます。乳酸は筋の収縮を制限し、筋の動きを悪くするので、速やかな除去が必要です。そこで、クーリングダウンを行い、血液循環を活発にすることで、効果的に乳酸を除去することが必要です

以下略。

検索上位のものを選んでみましたが、

”疲労物質である乳酸を取り除くため”

というのがほとんどです。

この10年間でこの理屈は完全に通用しなくなりましたので、

さてクーリングダウンをやる理由は何であると考えるべきか。

まず血流をいきなり下げると身体によろしくないというのはあります。

が、これはクーリングダウンというよりは走った直後に座り込んだりしない方が良い、

そういった話であろうと思います。

次に筋肉痛の話ですが、

これに関しては昔は筋肉痛の原因は乳酸であるとされていましたが、

近年では否定されております。

大手製薬会社さんは未だに筋肉痛の原因は乳酸と言っておりますが、

根拠を示された所はございません。

タンパク質を摂取することで抑制できますし、

そもそもに筋肉痛の原因というものが今一つよく分かっていない現状では、

何とも言えません。

あとはメンタルといった話が出ていますが、

その辺りはジョグでのクーリングダウン以外でも出来るだろうと思うところです。

ということで、

乳酸値を下げる以外の話がどこにも出てきません。

論文を検索したところで、

日本国内の論文には乳酸値を絡めた話ばかりですので、

どれも使えそうにありません。

むしろ、

トレーニングによる効果というのは運動中に生じた代謝物質によるものと考えられる点からすると、

運動後にクーリングダウンをするのは代謝物質を流すことになり、

効果を下げる理由となると推測する事が可能です。

近年の例でいえば、

成長ホルモンが多く分泌する状態は乳酸値が高い状態、

そういった事が言われています(PGC-1αなど詳細略)

ですので、代謝物質が多くある状態から素早く抜け出そうとするクーリングダウンには利点があまり無いと言えます。

もちろん、

軽く動くことで血流が良くなって代謝が進んで筋の疲労が弱められるといったことも言えますので、

高い負荷のトレーニングを続けてやるためには大事であるとも考えられます。

ですが、

これに対しては冷却法などによって同等の効果が観察されています。

それならば家に帰って食事をしっかりと摂取した方が効果が高い可能性も言えます。

その後にアイシングなどのケアを実施することで、

高いパフォーマンスを維持する事は可能です。

むしろ、

素早いエネルギーやたんぱく質の補給は、

以降の日々へと影響を与えるので、

クーリングダウンを丁寧に行う時間を選択するよりも、

トレーニング効果に影響すると推測される代謝物質を体内に残した状態で、

食事などで補給を行う方が賢明な選択であろうと考えられます。

もちろん、

翌日にレースがあるという場合や、

その日にもう一本レースがあるという場合は異なる事も考えられますが、

疲労というのはダメージとエネルギーの減少という可能性が高くなっている今、

普段のクーリングダウンを見直すのは大事かと思われます。

実際、

運動直後にタンパク質を摂取する事が回復を高め、

トレーニング効果を高くするという話は多いです。

一方で、運動直後にクーリングダウンをすると回復が高まり、

トレーニング効果を高くするという話はほとんど聞きません。

それであるならば、

家に帰って食事をして回復を促進し、

風呂に入って血行を良くして(疲労物質と呼ばれるものがあるのならこれで流せるでしょう)、

気になる点があるのならケアをする方が良いでしょう。

冬場の寒い時期にダラダラとストレッチをしたりするのが回復に良いかという質問に、

胸を張って絶対に大事と答えられる人はあまりいないと思いますし。

そして翌日に疲労感があったら、

練習の負荷を変更してケガを予防すれば良いでしょう。

毎日完璧な状態で練習に挑める人はいません。

そこをダウンによって完璧な状態が作れるという発想はあるかと思いますが、

そうすると今度はエネルギーの回復が遅れますし。

考えれば考えるほどに、

クーリングダウンという言葉が意味を伴っていない気がしますが、

如何でしょうか。

2015年1月6日火曜日

速く走るということに対する考察材料を一つ

特に前置きもなくデータをご覧ください。


2013年のインターハイにおける桐生選手(洛南高校→東洋大学) の疾走速度に関するデータをグラフ化したものです。

10m  5.22
20m  9.55
30m  10.63
40m  10.97
50m  11.27
60m  11.30
70m  11.30
80m  11.25
90m  11.08
100m 10.82

こんな速度で進んでいます。もう一つ、2011年の世界選手権優勝のBlake選手の速度変化。

10m  5.35     
20m  9.76
30m  10.84
40m  11.32
50m  11.62
60m  11.74
70m  11.71
80m  11.63
90m  11.49
100m 11.29

二か所に分けて数字を打ち出したので数値での比較が分かりにくい。

その点は気にせずに先へと。

桐生選手の最高速度は11.30m/s、
ブレイク選手の最高速度は11.74m/s。

トップスピードが速い選手の方がゴールタイムも速いというのはよく言われる話ではありますが、

では他の点ではどうか?

比較して頂ければ分かる通り、どの時点においてもブレイク選手の速度の方が速いですね。

グラフで見るとこんな感じです。


トップスピードがブレイク選手よりも低い点と、最後の失速もブレイク選手と同様に起っている、

そういった点が理解できるかと思います。

こうした点を理解してはいるかと思われますが、

どの距離においても言える簡単な話が、以下のグラフにすると分かり良いかと思います。


画像が少々小さくなりますが、

距離と速度の関係を塗りつぶした図になります。

なんとなく見ても分かるかと思いますが、

この面積が大きい人ほど速く走っているということになります。


こんなグラフの方が分かりやすいですね。

茶色の部分が桐生選手で青色の部分がブレイク選手。

この面積差をいかにして無くすかが勝つためには大事になります。

トップスピードで負ける点や後半の失速が見られるので、

前半部分だけでも上回れば差を縮めることは可能ですね。

ただ、これをやるのは短距離種目では難しいです。

どうしても加速に時間が掛かりますし、

無理して出力を高めることで力んだりして余計な失速につながりますので。


一方で中長距離種目においては、

最初の立ち上がりが異様に速くて、

後半になるに連れて落ちていく傾向にあります。

それをグラフにしようかと思いましたが面倒なのでまたの機会に。

ダラダラと書き連ねていますが言いたい事はトップスピードだけを意識してはダメである、

ということです。

後半の失速を防ぐのも大事ですし、

トップスピードまでの立ち上がりの速さも大事です。

いかにスピード曲線の面積を大きくするか、

これも意識して頂きたいと思うところです。

トップスピードが遅いから後半落ちるということではありませんので。

それは単に最初が速すぎるだけです。

速く走るにはペース配分というものがとても大事になります。

ラストスパートが出来ないという質問や相談をよく見かけますが、

それはそこまでのペースが速すぎるだけです。

正しい理解をして適切な練習を行う。

これが強くなるためには大事です。